OK!工事くん 今日も私の独り言です。
飛び込み営業マン 母を泣かせる営業マン。
東京の下北沢支社は24時間風呂事業部の販売拠点でした。
この事業部は太陽熱温水器の一戸建て狙いとは違い、主に都心の集合住宅をターゲットにしていました。
私は新規事業部の責任者として立川支社、中野支社、そして下北沢支社と拠点開設の展開をしてきていました。
当時は会社の知名度もあり求人募集をすると300名400名と新規支社開設一期性として面接の求人募集が集まってきた時代です。
営業マンの採用も個性的な人材がたくさん採用できた時代です。会社には勢いがあり、人はまさに玉石混交の職場となっていました。
ある朝、緊張した雰囲気の中でこれから朝礼が始まろうとしていた時に事件は起きたのです。
男5人がいきなり事務所に乱入してきて社員のK君をいきなり連れだしていきます。
社員K君が逮捕されたのです。
何事が起きたんだと戸惑っていると、すぐさま刑事が私に話しかけてきました。
K君んは詐欺行為をはたらいたという事で逮捕しますと言います。
私の心に動揺が走り、どこで詐欺をしたのか……。
お客様に迷惑を与えていないだろうか……。
いきなりハンマーで頭を殴られた気持ちになりました。
とりあえず朝礼をやめ、社員を送り出した後に刑事さんの話しを聞く事にしました。
K君は中野支社の一期生で入社をしてまだ3か月目の社員でした。
話が巧みでこれから伸びていきそうな営業マンになると思い、私が下北沢支社へ連れてきていました。
そこそこの数字を叩きだしていたのです。
刑事さんの話しでは、入社前に横浜のスナックで詐欺行為をしたと説明をしてくれました。
K君の実家は八王子だったのですが会社の寮に入居していて、ようやく居場所が判明したという訳です。
それから数日経ったある日にお母さんと弁護士が事務所に訪ねてきました。
お母さんは涙ながらにK君の事を語り始めます。
K君のお父さんが他界したあと一人息子を大事に育ててきたそうです。
一生懸命働いて大学まで卒業させたのに、今回の逮捕がまだ理解できないで苦しんでいると言います。
お母さんは元教師をしていた事も話されました。
女手一つでしっかりと育てたのに何故という思いです。
K君は横浜あたりの飲食街で肩書は弁護士を名乗っていたそうです。
弁護士という肩書で名刺を渡し飲食代の付けをためて踏み倒していたと聞かされました。
弁護士は裁判が始まるのでK君の嘆願書を書いてほしい、
そして出所後にこの職場でもう一度受け入れてほしいとの頼みです。
お二人のお話しを聞く中で、歎願書のお話しは引き受ける事にしました。
後日、このお母さんと同伴をして警察署から小菅の東京拘置所に
K君の面会に行くことになり差し入れもしてあげました。
面接から出会ってまだお互いの事が理解できていない社員に
何故ここまでする必要があるのかと自分でもよくわかりませんが
お母さんの気持ちを察するれば短い間柄でもこれも縁だと思ったのかもしれません。
こういう職場で働いているといろんな人間模様があります。
ハッキリ言って履歴書と面接だけでは見抜けない人もいます。
私なりにどのような社員であろうと最後まで見届ける気持ちがないと
集団を束ねていく事はできないと思っています。
K君は出所後に別会社へ勤め飛び込み営業を始めたのですが
上手くいかず退職をしました。
それから数年経ち、K君はまた同じ過ちを繰り返したという話しを人伝に聞きました。
今度は違う肩書での詐欺行為だったそうです。
あのお母さんは……と思うと何とも言えない気持ちになりました。
本当にバカな奴だ。 いまだに苦い思い出として残っています。
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