飛び込み営業マン 現場で体験した冷や汗が出る恐怖体験3章。
三重県松阪市からかなり郊外で数十件の家並みを発見した時のお話しです。
季節は12月に入っていた夕暮れ頃です。
私は契約を上げたい一心でテリトリーを探していました。
たぶんジャンバ-を着ていたから少し寒かった日だと思います。
山を後ろに背負った感じの何件か古びた家並みを見つけたのです。
前のテリトリー新興住宅街での訪問活動は惨敗でした。
このままではコケル。 私は焦って営業車で移動をする事にしたのです。
営業車を飛ばしテリトリーを探していると、この家並みの風景が飛び込んできたのです。
いける! これは決まるぞ。と、 直感的に感じるものがありました。
飛び込み営業を経験していくとやはり匂いというか直感的な勘が働きます。
山を背に南側の道路へ向かって数十件の家が建ち並んでいる風景です。
販売する商品は太陽熱温水器。
狙えそうな家が2~3件あると判断しました。
しかしここは全て叩こうと自分に言い聞かせ飛び込みを開始しました。
最初の訪問で予感が見事に的中し1本契約があがりました。
時間にして40分足らずで決まったのです。 ご夫婦そろっていい人でした。
二人とも工事を楽しみにしている雰囲気があったので、お客様にどこか紹介して
くれるお家がないかと尋ねてみる事にしました。
奥様が私達の後ろの家はいとこだから寄ってみなと言われました。
それともうひとつアドバイスをいただきました。
奥のどん突きの家はご主人が難しい人だから止めておけとのことでした。
そしていとこのお家も決まりました。
1件目の奥様が玄関口までついていってくれての商談です。
正直言ってクロ-ジングはまったく必要ありませんでした。
奥様が途中からお話しをしてくれて契約が決まりました。
一緒に設置しょうという事になったのです。
これで満足してはならないと自分に言い聞かせて他の家もまわる事にしましたが、
残念ながらあとの何件かはやはり警戒心があって断られました。
最後に残ったのはどん突きの家です。少し離れた平屋のあの家です。
奥様の止めておいたほうがよいというアドバイスもあったのですが
ここは飛び込み営業をする人間の性です。
全て叩こうという意志を貫徹する為に訪問する事に決めました。
すっかり暗闇になっています。
田んぼのあぜ道をトボトボと歩いて坂を上り玄関口までたどり着いたのです。
あれっ。 やけに静かだな、家族はいるのかなと? 思いながら、『ごめんくださ~い』
『こんばんわ』と大きな声をかけていると家の中から入って来いと呼ばれました。
入っていくと薄暗い畳の部屋でご主人が一人酒を飲んでいました。
何の用だと質問をされたので訪問目的を伝えると。
むくっと立ち上がり静かにこちらに歩いてきます。
顔見ると相当酔いが回っている……。
嫌な感じだなと思いつつ予感は的中しました。
次の瞬間胸元を蹴り飛ばされました。
まさか蹴り飛ばされるとは思っていなかったので一撃で
私は土間に尻もちをつき驚いていると『とっとと帰れ!』怒号が飛んできました。
言い返したくはなかったのですが、これは暴力です。
いくらお客様でもと思いつつ腹立たしい気持ちが襲ってきます。
何て言い返したのかは覚えていませんが、しかし訪問したのはこちらの都合です。
酔っ払っている相手に喧嘩をしても始まりません。
ここは早々に退却しょうと思い家を出ました。
悔しい気持ちが冷めない中で歩いていると
先程のアドバイスが今さらのようにわかった気がします。
頭が怒りで一杯になり歩いていると今度は背後に何かの気配を感じました。
誰かが私の後を追いかけてきます。 振り返ると野犬が2匹。
野犬2匹が唸り声をたてながら私に襲いかかろうとしています。
そのうちの1匹があたかも挑戦権を得たように前へでてきます。
これはヤバイ ヤバイ 襲われると思いつつ、今度は怯む訳にはいかないと自分を奮い立たせ
わっぁ-と大声を出しながら追い払う振りをして前へでました。
その行動に野犬2匹は一瞬怯んだのです。
それを見た私は野犬相手に追いかける勇気もなく、
全力で坂道を駆け下りて逃げたのです。
危なかった! 危機一髪が2度も続きました。
契約が2本もとれた現場でしたが最後にこういう結末が
待っているとはと夢にも思っていませんでした。
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